建築構造と最適設計 |
一般に構造設計者は設計資料とこれまでの経験に基づいて構造計画を選択し,構造物をモデル化した上で適当な設計を仮定し,応答解析を行います. しかし,近年の建築構造の複雑化・高機能化,性能要求の多様化,資源エネルギーの節減,厳しいコスト管理の要求等にともない,条件を満たす設計解を見つけるためには熟練設計者でも多くの手間と時間を要するようになっています. このような諸問題の解決に対して,明快かつ有効な解決法となる論理的な手法の導入を提案します. 最適化問題 とは与えられた制約条件の下で目的関数と呼ばれる何らかの評価関数を最小化する問題です. 構造最適化とは,応用数学や経営工学の分野で発展した最適化問題を構造設計に適用した問題です. このような最適化の手法は構造設計の論理化に有効です. 機械,航空機,自動車などの分野では,製品の開発プロセスの一部で最適化の技術が取り入れられ,コスト低減や安全性向上などに結びついています. 建築の分野においては,大規模な建物の大部分を最適化ソフトウェアにより設計するといった段階にありません.しかし,構造計画の段階や構造設計の初期段階で最適化ソフトウェアを活用した例は近年報告されており,今後いっそう多くの実建物に構造最適化が適用されるようになると予想されます. |